病んでないので
20XX年、世界は未曽有の大飢饉に襲われていた。アメリカではトウモロコシの不作と世界的ハンバーガー畑での大火事、超大型ハリケーンオクトパスの到来が起き、大統領は国家非常事態宣言を発令した。ヨーロッパでは雨が空から降り、中国ではパンダが暴徒化し畑を蹂躙し、インドでは排泄物とカレーが混ざる野原ひろし事件が起きた。日本もその例外ではなく、熊本の豪商が青森の林檎を買い占めたことにより、りんごの値段が高騰する事態が発生した(リンゴ危機)。
荒れ果てた世界は闘争へと向かった。個人や民族の生存を賭けた闘争だった。闘争は長い間続いた。
戦乱の期間、日本は、主に3つのグループに分裂し争っていた。
一つ目のグループは、科学文明を受け継いだグループ。彼らは九州に分布し、闘争を傍観し一貫して中立の立場を取った。
二つ目のグループは盗賊。ワハラー団と呼ばれた彼らは遊牧民族の様に日本中を駆け回り、炎上や売名行為を繰り返していた。
三つ目のグループは、各々界隈(テリトリー)を持っていたグループだ。大体は大君と呼ばれるリーダーが治めていて、自給自足の生活をしていた。保守的な人間が多かった為、界隈と界隈の間の交易は少なかった。むしろ侵略戦争や土地や水の奪い合いが頻繁に発生していたのだった。
日本で戦乱の世に希望の光が見えたのは、かの大飢饉から11年が過ぎた頃だった。九州の科学文明を継承したグループの女帝が崩御したのだ。というもの、女帝は飲んだくれでヘビースモーカーだった。
次の女帝を決める話し合い〈佐世保会議〉の際に、二人の少女が候補に上がり、どちらを女帝にするか争いが発生した〈八代の戦い〉。激闘の末、元ワハラー五虎将の松本猛が擁する守護神が勝利し、敗れた音香丸と戸系は奄美大島に島流しにされた。
即位した守護神は荒れきった日本を統一する意志を示し〈守護神勅令第一条〉、松本猛を征東大将軍に任じた。勇猛果敢で仁義に熱い松本猛は次々に四国や山陰、山陽、関西、北陸を制した。中には無条件降伏する界隈もあった。
ところが、守護神女帝即位から一年後の夏、破られた界隈の残党を保護していた日本最大の界隈を保持する霧崎に惨敗を喫し〈碓氷峠の戦い〉、その戦いで松本は左足を失くす大怪我を負い戦闘不能になった。松本の代わりに配下の尾辺が臨時に指揮を取るが、兵は纏まらず、二度目の惨敗をした。
そこで現れたのが女帝守護神であった。自ら剣を振るい、兵を率い親征なさったのだ。守護神が来たことにより松本は復活、兵の指揮も高まった。加えて、第三勢力ワサラー団が合流した。その結果、〈軽井沢の戦い〉で霧崎軍を破り、そのまま一気に勢いに乗り、本拠地のさいたまスーパーアリーナを包囲した。霧崎は登校の韓国を拒絶し、愛人の湊友希那と渡辺曜と愛猫のミーシャと共に自ら火を放ち自害した(この際に霧崎の骨は見つかっておらず、実は逃亡に成功していたという説もある)。
最強と言われた霧崎が討たれると、東北と北海道の諸界隈は絶望し次々と降伏していった。そうして日本は統一なされ、長崎を首都とする神聖日本帝国が建国されたのだ。また、日本より先に統一に成功し、第二次産業革命に成功した大朝鮮民国と国交を結び(この際に八代の戦いで敗れた戸系が活躍する話はまたいつか話そう)、東アジアに平和と秩序がもたらされることとなった。めでたしめでたし…
END